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「む…、何をやったらあんな胸になるんだ…?」
自分の胸元に手を当てて小さい声でぶつぶつと何かを言うリリア。
「先生?」
「む?あ、ああ済まなかった。次の者」
ミナが声を掛けるとハッとしたように顔を上げ次の人を指差す。
「はい──」
次に指されたのは、エンの目の前の席の人物──つまり、リベルだ。
リベルが立ち上がると、先程のミナのように黄色い声援があがる。
「えー、リベル=ヒュンマルです。属性は【ブラスト】と【アクア】と【ダーク】です。趣味は……色々かな…?」
黄色い声援が一層大きくなる。その様子をエンは、ぼーっと眺めていた。
「静かに!では次の者」
騒がしくなった教室を宥めて、自己紹介を促す。
順々と進み遂にエンの番に…
「エン=ヴァーイルです。趣味は特になしです」
それだけ言い、座る。
愛想なんて振り撒いても意味がない…。俺みたいな落ちこぼれと仲良くしようとする奴なんていないのだから…。
愛想のない短い自己紹介を淡々と済ます。
何故属性を言わないのか?理由など明白だ。
魔法が使えないエンの属性など分かるはずがない。"言わない"のではなく、"言えない"のだ。
罵られたりするのは慣れたが、魔法が使えない悔しさなど消えるはずもない。
言いたいのに、言えない。そんな悔しさが、エンの中を渦巻く。
独り奥歯を噛み締める。
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