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「猿飛くん、言い過ぎです。」
僕は見かねて猿飛くんの腕を引っ張った。すると、少し迷った素振りを見せたが小さな声でごめんと呟き俯いた。彼はこんなにも感情を露わにする人だっただろうか?いつも何を考えているか分からないような笑顔を浮かべているイメージだったが、今日の彼は何かに突き動かされるように感情のままに言葉を並べている。
「おい、なにしゃしゃってきてんだよ。オマケは黙ってやがれ。」
「龍牙!景人は俺の親友だぞ!今だって俺を庇ってくれたんだ!!俺の親友に黙れとか言うなよ!」
「俺様は気にいらねぇ。こいつは目障りだ。」
会長様は怒りの矛先を僕に変え睨みつけてくる。別に僕は皆元くんを庇ったわけではない。今にも殴りかかりそうだった会長様が猿飛くんの言葉を聞いて本気で殴ろうとしてたからだ。猿飛くんの言うことは正論なのだが正論がいつも正しく人の心に届くとは限らない。
「だりぃ、俺、そろそろ行くわ。」
ずっと黙って成り行きを見守っていた将彦くんが不意に腰を浮かせた。僕もそれに続き席を立った。
「お先に失礼します。」
「じゃぁ僕も行こぉっと。ここにいてもまた会長と喧嘩になっちゃうしぃ。」
そういって僕の後に猿飛くんがついてくる。
「燐、待ちなさい。まだ話は終わっていません。」
「もー何も話すことはないよぉー。新歓には参加するから心配しなくていいよぉ副会長ぉ。じゃねばいばぁい」
猿飛くんは振り返ることなく後ろ手でドアを締めた。
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