浮き世、離れ立つ夜明け空

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例えば、今―― この世界から私が居なくなったとして。 あくまでも例えば、の話し。 別に今の現状に不満が有るわけじゃない。 何となく、ふとそう思っただけなんだけど…… 「私が居なくなったら、皆慌てるよねえ?」 幸せ……なんだと思う。 本当に。 両親がいて、兄がいて、恋人がいて。 仕事だって上手くいってる。 「当たり前だ。第一、俺はどうなる? 急にそんな事言い出して、マリッジブルーってやつか?」 マリッジブルー? そうなんだろうか? 来月、私は結婚する。 今、私の横に座り呆れたように笑う彼、――雪島要(ゆきしまかなめ)と。 変わる。 魅月夜(みづきよる)から雪島夜に変わる…… 「要はモテるから、私が居なくても大丈夫でしょ?」 「相変わらず、冷たい奴。」 これが、結婚を控えた恋人同士の日常だよ、と言えば間違い無く夢を壊すだろう。 冷めてるわけじゃない。 結婚が嫌なんじゃない。それなら最初からプロポーズなんて受けたりしないよ。 ただ、 「こんなに簡単に世間一般の幸せ掴んでいいのかな?」 って、柄にもなくそんな事を考えてしまったんだ。 二十三年間、思い返せば苦労と言う苦労もなく過ごして来た。 壁にぶつかっても、案外簡単に乗り越えて来られた。 そんな私が、今度は簡単に女としての幸せを手に入れようとしてる……                    
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