浮き世、離れ立つ夜明け空

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ソファーにもたれかかれば視界に写る、明々と部屋を照らす蛍光灯。 見渡せば、二人で住むには広すぎるマンションの部屋。 ベッド、テーブル、カーテン、テレビ。 どれも新しく揃えたんだ。二人で暮らして行くために…… 統一された薄いパステルカラーの空間。 私の心だけがくすんでしまったのか? 「不安になるなよ。俺はお前を幸せにしたいんだ。」 「うん。」 「もう寝よう。明日も仕事、あるんだろ?」 そっと、私を抱き寄せて口付ける。 そのまま身を預け、要にもたれかかった。 そうだ…… これが、普通。当たり前の日常。 私は幸せなんだ。 手を引かれ、ベッドに滑り込む。 窓際が私。 マンションの五階。そこから見える景色が好きで、それが理由でこの場所を譲らない。 そんな私を後ろから要がギュッと抱いて眠る。 夜景を見つめながら、要の温もりを感じて眠る。 要の温もりを感じて目が覚め、朝の景色を眺めて起きる。 きっと、これからもずっと…… そう、ずっとずっとそうなんだって思っていた。                    
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