116人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもよりかなり早くに目が覚めた。
辺りはまだ薄暗い。
携帯を開けば時刻は午前五時を過ぎた頃。
二度寝……といきたい所なんだけど、パッチリと開いた瞳はそれをさせてくれない。
相変わらず、要は私を抱いたまま眠っていた。
起こさないようにゆっくりと、その腕から抜け出す。
テーブルに置かれたタバコを手に、音を立てないようベランダへ出る。
(身体に悪いからやめろって……)
何度となく要に言われて、禁煙したのは一年前。
それなのに、無性に欲しくなり一本だけ拝借した。
ジリジリと燃える煙草の先端。
吐き出せば白い煙が視界を濁す。
ベランダから見える薄暗い景色はビルばかりだけど、その間からもう直ぐ陽が昇る。
夜明け前。
昇る前の太陽の光が辺りを緋色に染め始めていた。
――気味が悪い。
どうしてそんな事を思ったのか。
緋色に染まるビルを見て、突如吐き気に襲われた。
「うえっ……げほっ!!!」
たまらずしゃがみ込んで咳き込む。
(斬れ斬れぇぇぇ――)
何コレ?
(二階だ、行くぞ!!!)
脳裏に荒々しい声が響く。
慌ただしい足音が響く。
冷や汗と悪寒に包まれ、溜まらず瞳を閉じ耳を塞いで身体を小さく丸め、鳴り止むのを待った。
頭が、痛い。気持ち悪い……要、誰か……助けて!!!
最初のコメントを投稿しよう!