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どれくらい飲んだだろうか。
歓迎会がお開きになる頃には、悠里は完全に酔っていた。
ぐるぐると回る景色を見つめていると、何だか遊園地のアトラクションのようで気持ちが良いのだった。
「木原さん、大丈夫~?顔赤いよ?」
小泉さんが背中に手をかけてくれた。
「あ、はい。大丈夫れす。すいません。」
(これは飲みすぎたな。しっかりしなきゃ…)
「それ、大丈夫じゃないよーーー。もう私が電車乗る所まで送ってくから!」
ろれつが回らない悠里を心配し、小泉が駅まで送ってくれることになった。
「初日にこんなんじゃ、緊張して飲みすぎちゃうよね。あーあ何でうちの男性社員はこうも気が利かないかなあ。」
駅までの道すがら木原の背中を支えながら、小泉は悠里を擁護するようにそんなことをつぶやいた。
電車の扉が閉まる音。
こちらに手を振る小泉の姿が、流れるように遠ざかる。
悠里の記憶はそこで途切れていたのだった。
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