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「あのっ…私…!ここここって…っ」
焦って言葉がなかなか出てこない悠里を見て、男はクスクスと笑った。
「まあ飲めば?」
そう言って男は温かい紅茶をカタンとテーブルの上に置いた。
モノトーンとダークブラウンで統一されたシックな家具を見回す。
(ここはこの人の部屋…だよね?)
寝室を出ても見慣れたドアや窓、キッチンが目に付いた。
悠里は全く見覚えのないその男をまじまじと見た。
(この人は…誰?どんな人なんだろう?
年齢は私と同じくらいで、背が高くすらっとしている。
髪は短いけどサラサラと綺麗で、切れ長の目が印象的。
顔も体型も整っている。
タイプかと聞かれればタイプ。
え、もしかして私、昨日この人と…?!)
悠里の心臓が激しく動き出した時、
「何があったか知りたいの?」
男が悠里の耳元で囁く。
その静かな声が、悠里の心を恐怖で埋め尽くす。
「やっ…やめてください!」
悠里は慌てて男と反対側に飛び退いた。
男はにやっと妖艶に笑ってみせた。
(…何かここにいては危険な感じがする。)
「わ、私帰ります。ありがとうございました。さよなら!」
立ち上がろうとすると、男に腕を掴まれた。
「待てよ。せっかく入れたんだから飲んでけよ!はい、座る。」
先ほどとは違い、少し強い口調で言う男。
(…何か…
この人怖い。)
有無を言わせない言動が、鋭い目つきが悠里を恐怖させた。
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