8659人が本棚に入れています
本棚に追加
/501ページ
「じゃーこれ飲んだら帰りますから。」
しかたなく座る悠里。
(そもそもこの知らない男から出された紅茶を飲んでいいものなの…?!)
カップを覗き込んだものの、色は赤みを帯びた綺麗な茶色。
そこからは何も読み取れなかった。
「感じ悪っ。せっかく助けてあげたのに。」
どの態度に対しての言葉なのかは分からなかったが、男にとって不愉快な行動をいくつも取っていたことは理解できた悠里。
「す…すいません。それで私昨日どんな状態でした?覚えていなくて…」
「どんなって…?」
こちらを見つめてニヤニヤする男。
(うきゃー!何よもう!!
何かあるなら早く言ってよ!)
男のもったいぶった態度にイライラしてくる悠里。
「ちょー酔ってた。」
「え、それだけ?」
「それだけ。」
男が本当のことを言っているのか信じられない悠里は、じっとその目を見つめたが、深い茶色の綺麗な瞳が動くことはなかった。
ほっとして軽く息を吐く。
「あ、何かあってほしかった?」
軽いテンションでそう言った次の瞬間、
ぐぃっ!
「えっ」
男が私の腕を引き、抵抗する間もなく唇を奪われる。
「いやっ!」
ドン!
悠里はとっさに男を突き飛ばしていた。
座っていた状態だったこともあり、あっさりと寝転がる男。
思考停止しそうな頭で必死に考える。
(…帰らなきゃっ!)
慌てて玄関へと走って向かう。自分の家と同じ造りなので場所は把握していた。
「これで何かあったってことで。あっ!俺、澤(さわ)っていうんだ宜し」
ドアを閉める時にチラっと見ると、男が呑気に寝転がりながら手をふっていた。
バン!!
言葉を聞き終わらないくらいのタイミングで、勢い良くドアを閉めた。
(…最っ低!
ちょっと見た目がいいからって調子に乗るなボケ!)
悠里は不思議と恐怖よりも怒りを感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!