煙の行方

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 秋の空は高い。  私は子供のころから、それがどうしようもなく不安だった。  小さな自分がなおさら小さく感じて、そんな自分がいてもいなくても良い気がして。  届かないとわかっているのに、空に手を伸ばす癖が今になっても治らないのは、未だに心のどこかで…… 「そろそろだよ」  空に手を伸ばす私に母が声をかけた。  うん、と軽く頷き私は母の後ろについて歩く。  日に日に小さくなるように感じる母の背中。  私はその背中に軽く手を添えた。  どういう言葉をかけるのが正解のだろう。  私はどういう言葉をかけてもらいたいのだろう。  父の棺が業火に焼かれる。
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