煙の行方

3/3
前へ
/39ページ
次へ
 秋の空は高い。  私は今、それがどうしようもなく不安だ。  小さな自分には、父がのぼる場所が高すぎて届かない。  遠すぎて、高すぎて、いつか忘れそうな気がして。  それだけは…… 「私はゆっくりそっちに行くから」  隣で呟いた母の言葉にハッとする。  初めて溢れた涙は、空にはのぼらず地に落ちる。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加