6人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの…ホントに大丈夫?」
少女に見とれていたリムルはハッとして下を向いた。
『だっ…大丈夫です…痛っ』
「あら…。怪我してるのね?私が消毒してあげるわ」
そう言って少女は、リムルに手を差しのべた。
リムルは顔こそ上げなかったけれど、しっかりとその手を掴んだ。
「ねえ。アナタ名前は?」
『リ…リムルです…っ』
「リムル。いい名前ね。私はミラ。さ、行きましょう?」
ミラはリムルの手をしっかりと握り、ゆっくりと歩き始めた。
リムルは、ミラの手の温もりを感じながら、夕暮れの街を歩いた。
歩いている間、ミラは何度もリムルに微笑みかけた。
リムルは恥ずかしさのあまり、うまくミラを見る事が出来なかった。
やがて1軒の家にたどり着いた。
「さ、着いたわ。入って?」
『…おじゃまします…』
ミラに招かれるままに家に入ったリムルは、目を見開いた。
なんとそこには、ミラの恋人らしき男の人がいたのだった。
『…え…?』
「ん?あぁ。ビックリさせてごめんなさい。彼、私の恋人なの。」
『……………っ』
「……リムル?」
恋人…いたんだ。
リムルはそう思うと、自分が恋に落ちた事がいかに罪深い事なのかを悟った。
しかしリムルはミラの笑顔を見ると本当に愛しく思ってしまうのだった。
「おかえり。…その子は?」
「ついさっき街通りで逢ったの。怪我をしてるの。今日は家にいさせてあげて構わないでしょう?」
「あぁ。もちろん構わないよ。名前は何て言うの?」
『リムルです…っ』
「リムルか。俺はバリー。ゆっくり休んだらいいから。」
『あ…ありがとうございます…っ』
なんていい人なんだろう…。
リムルは心の底から思った。
ミラが恋に落ちるのも無理がないと思ったのだ。
叶うハズのない、罪深い恋は、リムルを少しずつ締め付けていった。
*
最初のコメントを投稿しよう!