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俺の人生はなにかと失うものが多すぎた
たった数年で大切な人を2度も失って
居心地の良かった場所からも離れた
それでも、支えてくれる人がいるから俺は今でもここに居られるわけで
「うん、これからアメリカを立つよ。明日の昼にはそっちに着くから」
「分かった、気をつけて帰って来いよ」
「あぁ」
相変わらずの優しすぎる声が電話口から聞こえてくる
「それまで、あいつのことよろしくな」
「こっちは心配すんなよ。2人とも仲良すぎて…」
「お~い、腹減ったんだけど~」
「へったんだけどぉ~」
会話を遮るように遠くから聞こえてきた2つの声
「そういえば、そっちは昼か」
「うん、じゃ俺はこれから姫たちの料理作んなきゃなんないから」
「おぅ、じゃあまた」
そう言って、携帯を閉じ俺は搭乗ゲートへと向かった
「それにしても、あいつの影響受けすぎじゃねーか?」
電話口から聞こえてきたあどけない声
あれが今の俺にとって大切な宝物なのだ
たくさんのものを失った代わりに神様が与えてくれたたった一つの宝物
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