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マズイ、どうやら考え込み過ぎてしまったようだ。
先生の持つチョークが、カツカツと軽快な音を立てながら黒板の端へと向かっている。
早く写さないと。
ボクは、考え込む前まで書いていたところから、その続きを急いで書く。
この際、多少字が汚くなっても仕方ない。とにかく、速く書かないと。
ボクが板書の約3分の2程度をノートに書き写したところで、電子音が奏でるチャイムが鳴り響いた。
号令がかかり、4限目の授業が終了し、今日の日直が怠そうに板書を消しはじめた。
まだ写しきれていないので、少し待って欲しいが、いくら昼休み時間の喧騒の中でも、大きな声で呼び止めるのは、だいぶ勇気がいる。
日直の黒板消しが板書の半分を消したあたりで――ボクは、止めるのを諦めて出来るだけ多く写そうと頑張ることにした――誰かが、日直へ少しの間待ってくれと要求したので、幸いボクもノートに写しきることができた。
こういう時、恥ずかしがらずに、言葉を放てる存在に、臆病者のボクは心から憧れる。
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