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さて――、と3度目。
ボクが彼女について知ってることは、いつもマフラーを首に巻いていることと、寡黙とまではいかないかも知れないが、あまり饒舌なタイプではないことだ。
それが、去年から同じクラスだった彼女について知っていることだ。
余りの情報の少なさに、思わずため息をつく。
ああ、あと1つ忘れていた。
彼女の兄が、今代の生徒会長ということだ。
こんなことを考えている間にも、黒板の上に掛けられている時計の長針は、昼休みの終了時間へと、その身を少しずつだか着実に動かしていく。
「晃司! まだ飯残ってるか?」
いきなりの大きな声に、身体が一瞬大きく震える。恥ずかしい。
すぐに顔を横に動かすと、汗を垂らしながら肩で息をしている隆太が目に入ってきた。
既に食べ終わった旨を伝えると、相変わらずなオーバーなリアクションをとりながら、膝から崩れ落ちる。
木でできた教室の床を握りコブシで悔しそうに何度も叩く隆太の姿と、それを見る周囲の冷たい目が、あまりにも気の毒なので、明日、隆太の分もお弁当作ってこようかと聞くと、直ぐさま顔をあげ、縦に何度も振った。
今日ほど、卵焼きを上手く作れる保証はないのだけれど。
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