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「……そうね、此処は湊様に甘えなさいよ」
「………うっ、分かった」
俺と雪さんに言われて渋々祐は部屋を出た。
そしてやっと雪さんが本題を話した。
「湊様、単刀直入に聞くけど…貴方を襲った男は知り合い?」
「……いや」
あの時の事を思い出し、微かに震えていると…秀一が雪さん達に見えない角度から手を握ってくれた。
その手の温もりに安心して、俺は雪さんに言った。
「……でも、その男…自分で名乗ってました」
「…………なんて?」
「……青山秀明」
微かに秀一の手がビクッとした。
秀一は俺を驚いた感じで見ていた。
雪さん達は勿論、秀一を見ていた。
「…青山って、秀一様の知り合いかしら」
「…………知らない、だってアイツは…」
何やら秀一は俯いて挙動不審だった。
そういえば秀一は……子供の頃の記憶がない。
それを伝えようと言いかけたが、秀一に強く手を握られて言えなかった。
代わりに秀一が言った。
「……俺には兄弟なんかいない…それだけだ」
そして手を繋いだまま俺達は部屋を出てしまった。
残された雪さん達は困った顔をしていた。
―☆―
俺は秀一に引っ張られて、誰も使われてない部屋に連れてこられた。
部屋に入るなり、ドアに俺を押し付けて秀一が覆い被さるように立った。
「……ッハ……ハァ」
「おい秀一、お前大丈夫か!?」
何やらただ事ではない程の吐息と汗だ。
顔色もかなり悪い。
秀明って奴は秀一に何をしたんだ?
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