第三幕:黄泉の箱庭

16/26
前へ
/319ページ
次へ
「…あぁ、うん…疲れちゃってさ、わりぃ……で、今雅也さん居る?」 「…雅爺さん?居るよ」 そして雅也さんに変わってもらった。 ……雅也さんは事情を知ってるんだよな、多分。 「おや湊くん、こんばんは」 「…こんばんは、雅也さん」 雅也さんの声を聞いて少しだけホッとした。 そして俺は雅也さんに先ほどの出来事を話した。 …ライカさんの正体が分からなかったからライカさんの事は言えなかったけど… 雅也さんは少し考えて言った。 「……それは黄泉の箱庭という集団かな?」 何処かで聞いた事がある……あ、雪さんが学校で言ってた名前だ。 ……姫鏡を狙う吸血鬼集団。 じゃあ、その集団の仲間のライカさんも…吸血鬼? そう思った瞬間、頭がガツンと重く痛くなった。 なんだ……頭が…… 手から携帯が滑り落ちる。 雅也さんの心配する声が聞こえるが俺はそれどころではない。 痛くて痛くて……いつの間にか俺は林の中で気絶していた。 ―祐side― 加瀬に「別室で話したい」と言われ、誰も使われてない部屋へ移動する。 部屋に入って俺は加瀬に言った。 「……なんでお前、秀明の事知ってんだよ」 加瀬は俺に背を向け言った。 「知り合いなんだ、君達のように過去を覚えてる人物と…」 加瀬の言葉に驚いた。 まさか、俺達の他に誰か居るのか? 俺は加瀬と一定の距離を保った。 襲撃された時の対応だ。 それに加瀬はクスッと笑った。 「…そんなに警戒しなくても君達が倒そうとしている敵と俺は無関係だよ」 「……で、秀明の話は?」 俺は一定の距離のまま本題に入った。 加瀬は床に座り、昔話のようにゆっくりと語りだした。 「姫君の昔話の真実は知ってるだろ?」 「…望が晃を殺した事だろ?」 俺は言葉にするのも嫌だったが、言った。 そして大した驚きはなく加瀬が話した。 「……そう、君達は知らない…物語の続きに…」 俺は物語に続きがあるなんて思わなかった。 ……まぁ、俺の記憶はハルが望を殺した所で話が途切れるのは当たり前だ。 湊も同じだ。 しかし青山なら知ってる筈だ。 ……だが、さっきこの男は青山も知らないと言った。 それが何を意味しているのか… ……それにこの男の知り合いとは誰だ?
/319ページ

最初のコメントを投稿しよう!

813人が本棚に入れています
本棚に追加