彼は想う

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「待った、ストップ、起きるから、リン。」 思いっ切り、頭を下げる。 「冗談よ、まあそれは置いといて。 あんた、またくだんないことで悩んでたでしょ。」 「いや。」 「嘘ついても、わかんのよ。 だって、あんた顔に出るもの。」 「そう、分かるか。」 何だか、嬉しかった。 気遣い、理解して貰える事が嬉しいのだ。 「で、何よ。」 「それは、えーと、あれだ。」 思考が止まる。 話せることじゃないから、話せない。 それでも、嘘はつけない矛盾。 「リン、それまでだ、人が秘密にしている事を、無理に聞いてならないものだ。」 黒犬はいつの間にか、傍に座っていた。 「でも。」 「例えばだ、ユウが君に淫猥な思いを描いていたならば、その詳細を話せると思うのか。」 「え、うん、それは、ちょっとね。」 リンはこちらを見て、目を逸らす。 いやいや、それは。 「冗談だ。」 黒犬は口の端を上げる。 笑っていた。
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