第一話 赤頭巾ちゃん

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久遠の締め付けからすり抜けた玖々廼馳は、魁童に近づくと無防備なその鳩尾へと拳をめり込ませて、魁童を気絶させた。 「……本当にごめんなさい。こんな事…したくないけど……お姉ちゃんのためだから…」 そう言葉で謝りつつも、行動は言葉通りには伴っておらず、躊躇なくテキパキと魁童を近くの大木に縄でキツく縛り上げ、武器と野兎を近くの枝へと引っ掛けてしまいました。 そして、最後に玖々廼地は魁童の足元へ水筒を置くと、先ほどから玖々廼地の一連の動作を唖然と見ていた久遠へ向き直った。 「……準備出来ました…行きましょう。遠」 「え?…か、魁童は縛ったままゆくのか?別に寄りかからせておくだけでも良いのではないかと儂は思うんじゃが……」 「……久遠…甘いです……かっちゃんが起きたら…きっと気になって、僕達を追いかけてきちゃいます……そしたら荷物が重い僕達は不利……それなら、今縛って置いたほうが楽です……それに水は置いてるし、人も滅多にこないし……多分大丈夫」 「…そ、そうか」 「はい…それじゃ行きましょう、久遠」 …こうして、久遠と玖々廼馳は魁童が気を失っているうちに、再び重い荷物を持ち上げるとその現場から立ち去っていった。 しかし、彼らは気付いていなかった……いや、おそらく忘れていたのだろう。 人が滅多に来ない道というものは、危険が多い場所であるからであり、また、たまに通る人にろくな人間がいなかったという過去の実例があることを… かくして、魁童はこの後一年の不幸を選り集めたような災難に見舞われるのだが……それは少し後の話である。
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