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久遠と玖々廼馳が重い荷物を引きずって、再び隣山を目指している頃、※※は隣山に入って間もなく、見事に迷い子と化していた。
「ん~?……あれぇ?こっちがこうで、さっきがこれだったんだから、ここにこう行けるはず…………?」
慣れない地図を手に、複雑に分岐する山道と獣道の区別が難しく、クルクル地図を回転させたり、来た道を戻って別の道に入っているうちに、自分の正確な現在地を見失ってしまった。
今となっては修正の仕様がない。
その悲しい事実に薄々感じつつも、なんとかこの現状を打開するために、※※は薄暗い木々を抜けて山を見渡すことの出来る足場を探す。
道に迷うわ、外見がお年頃の女人であろうが、それでも※※は生粋の山育ち。
すぐに周りの木々より一際大きな木を見つけると登れるかどうか確認し、スカートを託し上げて固定すると枝へと手を伸ばした。
「ぶッ!?…く、くく、あははは」
「っ!?だ、誰!?」
誰もいないと思っていた背後から、突然聞こえてきた笑い声に驚いて振り向くと、そこには顔と腹をおさえながら笑いをかみ殺している青年の姿があった。
「す、すまない。姿を見かけて、声を掛けようと思ったんだが…ま、まさか、木に登ろうとするとは思わなかったよ…くっ、ハハハ」
顔を紅くしてスカートを元に戻す※※に謝る青年だが、それでもまだ※※の行動がツボだったらしく、静かな森に青年の笑い声が響き※※の耳を赤く染め上げた
※※は必死に平静を装うように、服のホコリを払うような仕草をするが、それでも恥ずかしさは抜けない。
そんな※※を笑いながら目の端で観察していた青年、竜尊はすっかり※※を気に入ってしまった。
「…道に迷ってるように見えたんだけど、俺でよければ案内しようか?」
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