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(……オバ、………ムツキ………………って!?おいおい、まさか?)
竜尊は行き着いた思考の結論を疑いながらも、確認のために※※の持っている地図を見せてもらう。そこには見知った地形と知り合いの狼達が住んでいる地点への各注意書き、そして目的地として赤丸の描かれた《無月》の家。
(……あいつ、親戚がいたのか)
口数の少ない奴なので、身の上話などもあまりしたことはないが、まさかこんな人間のお嬢さんの知り合いがいたとは知らなかった。
(いや、無月の奴を叔母と勘違いしてるって事は知り合いとは言えないよな…)
しかも、名前もムツキときた。
「……わざわざ隣山まで、お遣いなんて大変だな…誰に頼まれてきたんだ?」
「あ。えっと…育ての親で陰陽山の月讀さんに頼まれたんです」
「へぇ……」
(成る程な……そういうことか)
無月と月讀の因縁関係は嫌というほど知っている。毎度この2人の厄介毎に巻き込まれては、いつか抹殺してやろうと思っていたほどいけ好かない男だが、まさかこんな娘を隠しているとは知らなかった。道理で陰陽山の出入り口に結界が幾重にも貼られていたわけだ。
(こりゃあ……丁度良い)
この娘を自分のものにすれば、退屈も紛れるし、月讀の奴にも意趣返しが出来る。一石二鳥だ。その上、この娘もなかなか好みで気に入った。
竜尊はにっこり微笑を浮かべた。
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