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今は8月に差し掛かる。
夏の暑い日差しの中を日傘を差して商店街を歩いている少女がいた。
どうやら買い物の途中と見られる少女は夏だと言うのに日焼け防止のためか、薄い長袖の服にミニスカートはいいが、黒ハイニーソックスと言ったこの時期には合わない格好をしている。
理由も知っているらしく商店街の人達は何も言わない。
「あら!愛理ちゃん、こっちきなよ、やすくしとくよ?」
突然声をかけてきたのは肉を専門として扱っている店のおじさんだ。
「ふにゅ、ありがとです。でも愛理、今日の必要なもの買っちゃったです。」
と、おじさんの言葉に愛理は残念そうに言った。
「そうかい?なら、仕方ないか、またよってね?」
おじさんはそんな愛理にやさしく言ったのだ。
買い物をすませた愛理は帰宅しようと帰路につくつもりだったがふと声が聞こえた。
「ざんねん!また来てね」
そういいながらポケットティッシュをお客に渡しながらいった。
そう、福引きのガラガラをしていたのだ。もう、何十人の人たちがコレに破れたのかは定かではないが、悔しがるお客の顔はそれを物語っていた。
「そういえば、愛理も福引き券もらってたです」
思い出したかのように買い物カゴから、一枚の福引き券を取り出した。
福引きのガラガラを引くお客は丁度愛理を含め5人となっていた。
一等賞は5人ペアの海の旅行タダ券である。
当然狙わない手はない。現に今まさにガラガラを回そうとしているお客は必死な顔をして気合いを入れているのだから。
しかし、愛理の目には三等賞のたい焼き作り機一式が目に飛び込んでくぎずけだ。
なんせ、たい焼き大好きな愛理にとっては、何よりも魅力的に見えている事だろう。
そして自分の順番が回ってきた。
「ふにゅ~三等賞です!」
気合いを入れたが、あまりそうは見られていなかった。
福引き担当者は微笑ましく愛理の福引き券を受け取った。
「ふにゅっ!回すですよ!」
そっとガラガラを回した。
すると…………玉が出てきたのだ。
しかも……。
カランカラン!
「大当たりぃぃー!」
担当者は大げさな位の声で商店街全体に聞こえるかってくらいの声で叫んだ。
「一等賞おめでとう!!」
と、玉と旅行先の券が入った封筒を愛理に渡した。
色は金だ。
「…ふにゅ~……。」
少しすねた感じにその金の玉と封筒を交互にみながら、どうせ当たるなら三等賞がよかったなと思う愛理であった。
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