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気を付けて歩いたつもりだった。
用意された梯子を伝い、ゆっくりと。
疲れていたわけではないはず、だが体は自分が思うよりもかなり重く、ぐらぐらする梯子に多少の不安感を抱く。
そうして、しっかり押さえてよ、と冗談めかした言葉を放とうと、梯子の下を見た途端、重くなっていた体は急に梯子から切り離された。
―――あれ?
やけに思考がゆるやかなのに、周りの風景は滑稽に揺れて、まるでワープでもするかのように、心許なく体が宙を舞った。
不思議と、楽しい、なんて感じながら。
誰かが「流鬼!」と叫んだ気がした。
そんなに叫ばなくても聞こえる、なんて、言ったつもりで声にはならなくて。
瞬間、慌ただしく何かの上に体が落ちた。
―――落ちた。
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