事故

8/11
前へ
/30ページ
次へ
―――何も、思い出せない。 しばらくして白衣の男がやってきて、四人とやいのやいのと話した後、俺を連れてどこかの個室に移動した。 体は何ともないはずなのに、病院にいるようだった。 検査。問診。 いろんな事をしたが、俺には特に異常はなく、強いて言うなら、何も思い出せないくらいだった。 「記憶喪失、です」 白衣の医師が静かに告げた。 よく聞く、頭を打った拍子に、というやつらしい。 俺の名前は流鬼で、周りにいるのはバンドのメンバーだという事だけは、検査の最中教わった。 「しばらく活動は無理でしょうね…」 医師が表情を曇らせる。 まあ、そうだろうな。 今まで俺が書いたらしい歌詞も歌い方も、まるで知らないもののように感じる。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加