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―――何も、思い出せない。
しばらくして白衣の男がやってきて、四人とやいのやいのと話した後、俺を連れてどこかの個室に移動した。
体は何ともないはずなのに、病院にいるようだった。
検査。問診。
いろんな事をしたが、俺には特に異常はなく、強いて言うなら、何も思い出せないくらいだった。
「記憶喪失、です」
白衣の医師が静かに告げた。
よく聞く、頭を打った拍子に、というやつらしい。
俺の名前は流鬼で、周りにいるのはバンドのメンバーだという事だけは、検査の最中教わった。
「しばらく活動は無理でしょうね…」
医師が表情を曇らせる。
まあ、そうだろうな。
今まで俺が書いたらしい歌詞も歌い方も、まるで知らないもののように感じる。
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