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「流鬼さんに、大事な人はいますか?」
何だか違和感のある言葉を、白衣が放った。
普通は家族って言うんじゃないのか。
メンバーは顔を見合わせて、京さん、と呟いた。
京さん?
また、知らない名前が…
いや、忘れてる、だけなのか。
それにしてはやけに、クリアに胸に響く名前だ。
程なくして、「京さん」が病院に駆けつけた。
金髪のツンツン頭を振り乱した様子で、急いで来たのかジャージの上着が前後ろになっている、俺より少しだけ小さい男。
「流鬼…」
悲しみとも安堵ともつかない、微妙なニュアンスで呼ばれて、何だか不思議な気分になった。
「あんたが、京さん?」
口をついて出た言葉が、変な違和感を伴って響く。
京さんも一瞬たじろぐ。
メンバーの誰かが、今の俺の状況を説明した。
京さんが、ふっと目を細めた。
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