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……嫌な予感がした。
なのでぼくは何が来ても堪えられるように足腰に力を入れる。
きららは両腕を広げそのままの勢いを保ちつつ、左足で力強く地面を蹴り――
「――つーかまーえたっ」
「……きらら、危ないから」
というか怖いから。
下手したら落ちてたから。
きららは抱き着いたままぼくの胸板に頭をぐりぐりと押し当てる。
今日のきららは甘えキャラらしい。
そんなことより、
「……きらら」
「なになに? にいちゃん」
取り敢えずぼくは目の前の頭にチョップを入れる。
うぎゃ! と少女としてはあるまじき悲鳴をあげ頭を両手で抑えた。
「いきなり何すんだよー、ぶーぶー」
「何すんだよはこっちの台詞。下手したら二人とも真っ逆さまだったんだぞ」
「んー……、あれだねっ、二人で愛のフライトだねっ」
「……今回は難易度高いな」
「もー、バカだなぁにいちゃんは」
いい? と腰に手を当てる。
無い胸を張って。
「フライトを和訳すると飛行でしょ? それに『とう』を前に足すと……ジャッジャーン!! 答えは愛の逃避行♪」
「………三点」
「うおっ、ひくいっ!!」
いやいや言葉遊びですらないし、そんなの分かるわけがない。
しかしきららはその点数が不服なようで、厳しいよぉ、と頬を膨らませてぶぅたれていた。
「…………」
ちょっとかわいいかなとか思ったり。
「……戯事かな」
「んん? 何か言った?」
「いや、……そういえばさららは?」
きららと一緒に探索に出かけたもう一人の同行者であるさららが見当たらない。
てっきりどこかに隠れてるのかとも思ったが、辺り一面は本当に何も無い草原なので隠れられる所がまったく無く、それはないみたいだ。
あっ、と思い出したようにきららは手を叩く。
「そうそう消えちゃったっ!」
「先に言えよ!!」
「んー……消えちゃうとは何事だっ」
「大事だっつうの!!」
「あはは、にいちゃんおもしろーい♪」
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