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遺書はあとでいい。
今は……
「ちょっと。電話を貸してくれ」
取りあえず家に電話する。
妻と娘。
俺の家族。
死ぬ前に、家族の声が聞きたい。
「お願いだ……でてくれ…っ!!」
電話はつながらないまま、呼び出し音だけが無情に鳴り続ける。
俺は妻と娘の新しく買った携帯の番号も知らない。
こんな時になって、自分の居場所のなさに気がついた。
「俺は…一人なんだな」
「産まれてくる時も、死ぬ時も人はいつもひとりですからね……」
声をもらすようにして医者はつぶやく。
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