第 壱 話

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未練なんてもうどうだっていい。 恋愛したかった。結婚したかった。おいしいものいっぱい食べて、いっぱい遊んで。 そんなものはもうどうだっていい。 今はただ、帰りたいだけ。 帰ったところで死んだ自分に居場所なんてないのはわかっているけれど。 それでも、かつての自分の居場所だったところへ帰りたい。 「だれか・・・!」 暗くなり始めた交差点を急ぐ人の群れに虚しく響く、聞こえない叫び。 「だれかああああ!!!」 今日はこれで最後にして眠ろう。 そしてまた目が覚めたらつぶやくところからはじめるんだ。
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