第 壱 話

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褐色の肌に色素の薄い茶色い髪。ガタイのいいサーファーのようなナリのこの男は私を覗き込むなり、私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。 「泣くな。地縛霊。俺が案内してやっから」 「・・・どこへ?」 「ん。何処へ行きたい?」 何処へ行きたいといわれても、私はここから離れることは出来ない。 それはすでに何度も試した結果だ。 「行きたくたって、ここから動けないよ・・・」 「まぁ、地縛霊だからな」 そう言うなり、タケルは私を抱き上げた。 不思議な感覚が私を包んでいく。 まるで温かいお湯の中で泳いでるような柔らかな感覚。 そして、ズタボロだった私の姿は生前の姿に戻っていた。
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