第 壱 話

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私は、タケルの肩越しに遠くなっていく交差点を呆然と見つめるしか出来なかった。 一体何がどうなっているのだろう。大分混乱している。 地縛霊だった私をこんないとも簡単に解き放つことが出来るのだろうか。 そんなこと出来るのは陰陽師やらお坊さんやらしか思いつかないけれど、それなら私は既にここにはいないはずだし、タケルはそのどれでもない気がする。 それに、家に帰りたいという思いも、家の場所も伝えていないはず。 「そう願っただろう?」 「え?」 「家に帰りたいと願っただろう?」 確かにそう願った。 だけれど今も私は何も言葉にしてはいないはず。
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