第 壱 話

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なんだかもやもやした気持ちで、ただひたすらに住宅街を奥へと進んでいく。 住宅街の大通りは、仕事帰りのサラリーマンや部活帰りの学生たちが家路を急いでいた。 もちろん彼らの目に私たちの姿がとまることはない。 そして、通り過ぎていく家々からはおいしそうな匂いが立ち上り、家族の団欒の時を知らせる。 ほんの3日前まで私はあの中の一人だったのに。 夕飯の匂いを感じながら、自分の家の夕飯を妄想して。ご飯食べたらテレビをみようかなって。 生きていたときと変わらない日常風景が少し恨めしく感じられた。
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