第 壱 話

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そして、家に近づくにつれて嬉しい気持ちと裏腹に現実を目の当たりにする恐怖が沸き起こってきていることに気づいてしまった。 そう。 私は、大事なことを忘れていたのだ。 私自身が、今までの生活と私自身をを失ったように、家族もまた、今までの生活と「私」を失ったということを。 自分のことだけしか考えていなかった。 家族は、家族は今どうしているのか。 笑っているはずがない。 笑えるはずがないんだ。 あんなに渇望していた家がもうすぐ目の前だというのに、自分を失った家族の顔を見るのが怖くなっていた。
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