第 壱 話

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夜が来ればまた真っ暗な闇が私を抱いて静かに朝を待つのだろうか。 ひとりぼっちで。 人並みの中に時折幽霊達がまざっているが、何処からともなく現れて何処かへ消えていく。 私と同じようにこの交差点に縛られている者はいないようだ。 「だれかー・・・」 もちろん誰も答えない。答えてくれる人がいるなら藁にもすがる気持ちなのに。 「だれかー・・・」 虚しさもピークに達し、自然と涙があふれてくる。生きていた時だってほとんど泣いた記憶なんてなかったのに。 疲れたわけじゃない。だけれど心が辛くて、泣きたくて、供物のある電柱のそばに座り込んだ。
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