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第四十二回メフィスト賞受賞作品ですね。
ミステリ色はさほど強くはないですけれども、云うなれば青春ミステリといった感じでしょうか。どぎつい雰囲気ではなく、微風が吹くような、爽やかなお話です。
ミステリ3、青春7、というところでしょうか。
だからなのかどうなのか分かりませんが、非常に文章が柔らかいのも加算されて読みやすいです。
この“プールの底に眠る”はメフィストの座談会でも言ってましたが、やはり村上春樹な感じがしてならないという印象もありますが、確かにそんな影響を受けたのでしょうけれど、まあそこはご愛嬌ということで。
ただ小説としては素晴らしく、主人公の行動に若干の違和感はありますけれども、それでも受賞した作品だけあります。
何より優しい文章なんですよね。遠く遠く離れた、きれいな文体なので私は好きでした。また一人称で話が進むので、感情移入しやすかったのもあるのだと思います。
さてお話なんですが、冒頭から留置場の中から始まります。その中で、高校生の頃の思い出を引っ張り出して回想に耽るのですが、最後まで回想です。どうして主人公が留置場に入らなければならなかったのかという疑問は、最後の方で分かります。
一週間の回想があって、七日でようやく終わるのですが、中にいる間、主人公は色んな悩みを抱えてそれを処理しようにもなかなかできないまま、留置場を出るのですが、……げふんげふん。
とまあ、案外気の弱い主人公の滑らかな内容ですので、ミステリ初心者の方々にも安心して読める小説です。ミステリ色の強い作品が好きなコアなファンには物足りなさを感じるかもしれませんが、そこもご愛嬌ということで。
ただ私はこの作品を読んで最後はうるうるきましたよ。「いい話じゃないか~!」って。
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