95人が本棚に入れています
本棚に追加
(ニガー)
YO、朋輩! という語り口で怒涛の勢いでまくし立てて話す口調がなんともいえない感覚に捕らわれる、「介護入門」。
第百三十一回芥川龍之介賞受賞作品です。
モブ・ノリオの祖母の死をきっかけにして書いたという作品ですが、作中の語り部は介護をする傍ら、思いっきりジャンキーなんですよね。
世間での介護のイメージがいかに作られた欺瞞に過ぎないか、実際の介護というのはまさに生き地獄で、楽しいことなんかなくて、当然のことながら布団に小便はまき散らすわ糞はするわで、精神的に追いやられて自害する人も少なくありません。語り部もその一人で、泣き、笑い、悲しみ、と現実というものをラップ調で語ってくれます。
文学だけあって、読み手は読了した後もしばらく放心状態が続きます。とても他人事とは思えない、非常に考えさせられた作品でした。
祖母を気遣う描写なんかも飛び抜けて凄く、「うぬぬぬ……」と唸らせるところが数多くあり、まさに感歎の一言につきます。
ジャンキーな主人公は時々、現実から逃避して妄想の世界に突入するのですが、そこの部分の描写が生々しく、きちがいじみた発想で、モブ・ノリオ自身もジャンキー生活を送っていたのかYO、朋輩! と思わす凄まじさを感じ取れずにはいられません。
目を背けることは決してできない、どこの家庭にも降り注ぐ日常だということを改めて知らされた作品です。
今は文庫落ちで値段も四百円ぐらいで安く購入することができますので、未だに芥川作品を読んだことのない方は一度読んでみるのもいいかも。
YO、朋輩! 芥川賞は凄いぜ!
最初のコメントを投稿しよう!