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正直に告白しよう。
俺───結城宗助は、確かに本心を語ってはいた。
けれど、意図してあんな風に嫌味な言い方をしていた。
リズの良心を攻撃する為に。
……その結果がコレだよ。
「本、当に……ッ、済み、ません……ッ! わ、私……私は……ッ!」
俺は今、凄まじい罪悪感に押し潰されそうになりながら、リズを軽く抱き寄せ頭を撫でている。
「いや、本当に……俺が悪かった。リズの良心の偉大さを舐めてた。頼むから落ち着いてください」
お願いします。
でないと、俺の胃にそろそろ穴が開く気がするんです。
「ユウキ殿は、何も悪く、無いです……ッ、本当に、何も……、なのに私は……ッ!」
俺の肩付近が掴まれ、服に皺が寄せられる。
ああああぁ……。
胃がキリキリする、胃がキリキリする!
「ハハハ、馬鹿だなリズは。あんな嘘にダマサレルナンテ」
駄目だ、片言になった!
今の俺、どれだけ動揺してるんだよ!?
「そうです、馬鹿、なんです……ッ! ユウキ殿は、命の、恩人で……なのに私、は……ッ! ごめ……なさ……ッ、本当に、ごめんなさい……ッ!」
俺の胸に額を擦り付け、ひたすらに謝るリズ。
俺はただ、そんなリズの頭を撫で続けるしか無かった。
「……少し、は……落ち着き、ました」
かれこれ、三十分は最低でも経っただろうか。
精神状態が相当に宜しく無かった為、経過した時間は良く分からない。
ただ、これだけは言える。
生き地獄を味わった、と。
「重ね重ね、申し訳ありませんでした……」
「もう良い……もう良いから……」
ヤバいな……。
俺は当分、リズをからかえそうに無い……。
「あぁ、そうだ。精神的にどうのと言ってたのは、特に一昨日の一件だな」
言葉を濁すのは止めて、詳細に語る事にした。
敗北感が半端じゃ無いが、仕方無い。
それは些細な事だ。
「俺の事で、リズが俺より取り乱してくれた───ってのもおかしな表現だとは思うが、兎に角そのお陰で、俺は比較的平常心を保てた。それに普段から、細かい所に手が届くと言うか、な」
疲れ切っている所為で、言葉に感情が込められていない。
こんな調子で信じて───
「そう、ですか……。それは良かったと、思います」
───貰えただと……。
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