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「……よう」
「ど……、どうも」
目の前には、俺を牢屋に入れた大男。
ここはどうやら、民家の中らしい。
食卓があり、その中央には美味しそうな匂いを漂わせる料理が大皿に載せられ、その周りには小皿と箸が何組か置かれている。
「お手数ですが、また牢屋まで案内して頂けますか? 明日の朝まで大人しくしている予定だったので」
理解不能な現実から目を逸らすべく、一応立っていた予定に近付きたい。
そう思っての言葉。
「お腹空いてるんでしょ? ここまで来たんだから、食べてよ」
声が聞こえた左に目を向けると、そこに居たのは俺の左手を掴んだままの女性。
記憶が無い。
ここまで歩いてきた、記憶が。
無いんだよ、本当に。
なのに、何で俺は牢屋から出てるんだ?
「もう空腹とかどうでも良い」
「そんな筈は無いでしょ」
冷静に突っ込まれた。
「……何なんだよ、これは。訳が分からない」
フリーな右手で頭を抱える。
「『訳が分からない』も何も、転移魔法を使っただけだよ?」
……………。
確定。
ここは、俺が居た世界とは違う。
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