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「突然こんな事を言っても、信じて頂けないと思いますが……俺は、正直に話します」
とにもかくにも、話し始めなければ。
「俺は、こことは異なる世界から来ました」
まずは反応を待つ。
「異なる、世界から?」
声の主は市村桜さん。
「はい、そうです」
淀み無く、ハッキリと肯定する。
只でさえ信じられない内容だ。
中途半端な態度では、確実に信じて貰えない。
「にわかには、信じられない話だね」
だろうな、流石に。
俺だって、いっそ疑いたいくらいだ。
けれど、俺はここが異世界である証拠を体験してしまったんだ。
「それを証明する事は、出来るか?」
今度は市村昭久さん。
疑う様な目で、それでも話は聞いてくれる。
「証明になるかどうかは分かりませんが……これを、見てください」
俺はポケットから携帯電話を取り出し、開いて見せる。
「何だコレは?」
全く分からない様子を見せる昭久さん。
その様子を見て、ほっと一息。
「『携帯電話』、と言う名前の物です」
「『携帯』は分かるけど……『デンワ』って何?」
質問者はまた桜さん。
「遠く離れた場所に居る人と、会話をする為の機械───いや、道具です。それ以外にも、出来る事はありますが。……ところで、『機械』と言っても分かりますか?」
俺は二人の顔を交互に見るが、どちらも眉間に皺を寄せている。
「機械と言うのは、俺の世界の人間が作り出した叡知の塊の総称です。道具をより高度にした物だと、理解してください」
そう言って、俺は携帯電話を操作する。
ディスプレイに文字を打ち込んでいく様を見せると、二人は不思議そうにそれを眺めた。
「こんな技術は、この世界にありますか?」
俺がそう質問すると、二人は揃って首を横に振った。
「では、これが証拠という事で」
携帯電話の電源を切り、ポケットに仕舞う。
「……宜しいでしょうか?」
二人の様子を窺う。
昭久さんは、唸っている。
桜さんは───
「他には、何が出来るのっ? 『機械』ってあくまで総称なんだよね? だったらどんなのがあるのか教えてよっ! すっごく興味があるなぁっ!」
───怒濤の質問ラッシュ。
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