俺は俺。でもここは何処?

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「……市村桜さん。信じて貰おうとしている人間の台詞では無い事は、重々承知の上で言わせて貰います」  それでもこれは、言わざるを得ない。 「少しは疑ってください」  信じ過ぎだ。 「『にわかには~』って、最初に言ったよ?」 「最初だけじゃないですか」  軽く判断材料を見せただけだぞ、俺は。 「市村昭久さん、娘さんは大丈夫ですか?」  無性に心配になってきた。 「こう見えて、桜が人に騙された事は一度も無い。少なくとも、俺が知る限りではな」  しかし、返ってきたのは意外な言葉。 「あと、呼ぶ時は『昭久』だけで良い」 「あ、私も『桜』だけで良いよ、宗助」 「あ、はい───。……『宗助』?」  いきなり呼び捨てにされた? 「うん、『宗助』」  聞き違いだったり、言い間違いだったりはしなかったらしい。 「……桜さんがそう呼びたいのであれば、俺は構いませんが」 「あと、『桜さん』じゃなくて『桜』って呼び捨てして欲しいかな。だって、私より少し年上でしょ? それなのに『さん』付けって、何だかくすぐったいし」  一度、昭久さんの方を見る。  特に妙な表情は浮かべていない。  それなら構わないだろうか。 「それなら、『桜』と呼ばせて貰います」 「敬語は取れないの?」  どうしてこんな、フランクさを求められているんだろうか。 「取ろうと思えば、取れますが……」 「じゃ、取ってね」 「………。分かった」  まあ、深い意味は無さそうだ。 「宗助」  俺が何とも言えない気持ちを誤魔化していると、昭久さんが俺の名を呼んだ。 「これから、どうするつもりだ?」  いきなり答えに困る内容。 「流石に……自分でも、どうすれば良いのか分かりません」  答えられるのは、そんな言葉。  乾いた笑みのオプション付きで。 「この世界での常識すら知らない俺では、職に就く事も難しいでしょうから……」  野垂れ死に、というのが嫌にリアルな響きを持ってしまった。
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