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「仕方無い。暫(しばら)くウチに置いてやる」
……渡りに船?
いや、しかし。
「いえ、そこまでして頂く訳には───」
「頼れるモノなんて無いだろう?だったら四の五の言うな」
「───……ッ」
確かに、その通りなんだが……。
「俺の言った事、信じて頂けたんですか?」
問題は、ソレだろう。
「半信半疑だ」
「……俺が言う事じゃ無いですけど、半分も信じちゃ駄目ですよ。最低でも九割は疑いましょうよ」
「信じて欲しいのか、疑って欲しいのか、ハッキリしろ」
昭久さんは、呆れた様子で言った。
いや、ごもっとも。
「信じて欲しいですが、客観的に見て疑うべき内容だと思います」
「本当に自分で言う事じゃ無いね」
それもごもっとも。
「仕方無いだろ。無茶苦茶な事を言ってる自覚があるんだから」
けれど、俺の言(げん)にも正当性はあると思っている。
「面倒な性格してるね」
「それも自覚がある」
だからこそ直す努力をすべきなのも分かってる。
しないけど。
「……でも案外素直?」
「捻くれてると思うけどなぁ」
「心根は割と真っ直ぐしてそうだけど」
どうなんだろうか。
「ところで桜」
けど今は、そんな事より。
「うん?」
「何で、俺がここに住む流れに反対しない?」
それが不思議で堪らない。
「え、何で? 別に構わないけど」
不思議で堪らない。
本当に。
「昭久さん。父親としてどうなんですか、桜のこの無防備さは。俺も男ですよ? この家に置いて良いと思いますか?」
「それは確かに正論なんだが、自分で言うなよ」
「分かってますよ」
分かってるんだよ。
でも、俺が言わないと二人とも、その話題に触れもしないじゃないか。
「いや、正論だって分かってるなら、俺を受け入れる選択肢は有り得ない筈でしょう?」
「野宿したいのか、お前は?」
「そんな訳無いじゃないですか。嫌に決まってます」
誰が好き好んで野宿なんか。
……ああ、自覚はあるんだよ!
でも、性分なんだ。
だから仕方無いんだ!
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