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「……お前なら、問題無い様にしか思えないんだが。その場の勢いで何かをしたりだとか、そんな心配が出来ない」
妙な信用を獲得してしまった。
俺を見る目も、何だか親戚のおじさんの様だ。
「いや、心配してくださいよ。貴方自身が牢屋に入れた不審者ですよ、俺は? 未遂で終わっただけかも知れないじゃないですか。これも含めて演技なのかも知れないじゃないですか」
「お前、どう考えても大丈夫だろう」
言えば言う程、ドツボに嵌まっていく。
……いや、俺は良く考えて貰いたいだけなんだ。
年頃の、しかも相当綺麗な娘を持つ父親が、その娘とそう歳が離れていない男を家に住まわせる。
その危険性を。
あ……、いや───
「───そうだ」
忘れていた。
「どうした?」
重要なファクターを。
「この世界には、魔法があるそうですね」
「と言うと、宗助の世界には無いのか?」
無いに決まってる。
こう考える時点で、俺はここではズレてるんだ。
そのズレを忘れていた。
「はい、ありません。その代わりの『機械』なんでしょうね」
ポケットの中の重みを再確認しながら、言葉を続ける。
「ここで質問なんですが、魔法にはどういったモノがありますか?」
「機械にはどういったモノがあるのか、っていう私の質問には答えて無いのにー」
「桜。後でちゃんと答えるから、横槍を入れないでくれ」
話が進まない。
「初歩的なモノで、火を起こす、風を送る、氷を作るってのがある。本気を出せば、殺傷能力も十分にある力だ」
ああ、成る程。
となるとやはり、創作物の「魔法」のイメージで間違いでは無いのか。
「ただし、殆んどの人間は魔法を使えない。先天的にな」
ふむ。
「魔法を使えるのは、ほんの一握り」
「桜はその『ほんの一握り』に含まれる、と」
「ああ。割合としては、一万人に一人って所だ」
かなりのレアケースなんだな。
「それなら大丈夫ですね。襲われても、大体返り討ちに出来る訳ですから」
俺なんか、ひとたまりも無いだろう。
「ヤマト族に限って言えば、一割程度だがな」
「俺が魔法を使えるかどうか、確認する方法を教えてください」
微妙にリアルな数字は、本当に怖い。
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