住めば都?

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「それとミーア。俺の性格に文句が無いなんて言ったが、それは絶対に有り得ないと思うぞ。ついでに格好良いとも思わない」  強さに関しては、否定出来ない領域に来てしまったが。 「えぇ? こんな長時間、私に魔法を教えてくれておいて? ……それに、結構端正な顔立ちしてるし」  俺が否定するも、ミーアは引き下がらない。 「魔法を教えているのは、カラムとの取引があったからだ。それから顔は───嫌いなんだよ、嫌な奴と似ているから」  一瞬の躊躇いの後、俺は言い切った。 「とにかく、この話は終わりだ。城に戻る」  しかしすぐにそう言って、強引に話を打ち切る。  俺らしくも無く。  けれど、その話題に触れながら冷静でいられる自信が、今の俺には無い。  俺は踵を返し、我先にと城へ向かった。  ここに居るとすっかり落ち着く様になってしまった、リズの部屋。  ミーアとは城に着いてすぐ別れた為、居るのは俺とリズの二人だけ。  別れ際、俺に何か言いたげだったのが印象に残った。 「何だか、らしくありませんでしたね」  ソファーに沈み込むかの如く座る俺に、リズの心配そうな声が届いた。 「分かってる。自覚してる。だから放っておいてくれ」  目を閉じ、コミュニケーション拒否。  頭を冷やしたい。  心を鎮めたい。 「……暫(しばら)く、部屋から出ておきましょうか?」  ………。 「いや、良い。監視役を放り出してまで、俺を気遣う必要は無いだろ」  一瞬だけお言葉に甘えてしまおうかとも思ったが、これだけ気遣ってくれるリズに迷惑を掛ける訳にはいかない。  それに、近くに居られて不快でも無い。 「少し寝る。寝息が五月蝿かったら、容赦無く叩き起こしてくれて構わない」  少し寝て、忘れよう。
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