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それから数日後。
俺がこの世界に来て、丁度一週間が経過した日。
城内に、緊張が走った。
「急げ!」
「クソ、何だってこんな急に!」
「文句を言ってる暇があれば、手を動かせ!」
「来るべき時が来たって感じだなぁ、チクショウ!」
雑多な足音に、飛び交う怒号。
話は、三十分程前に遡る。
「き、緊急の通達ですっ!」
偶然にも、用事でキャヴェンディッシュ中将の執務室に居た俺とリズ。
「昨晩の夕方、我が国の西方砦が───」
ノックもせず、突然開かれたドア。
そこから現れた男性。
「───所属不明の部隊により、攻撃を受けました!」
今、俺の腕時計は十四時を指し示している。
「総数は二千、魔法使いは十。完全な奇襲だったらしく、防戦を余儀無くされていたとの情報です!」
伝令だけで、およそ二十時間の距離。
援軍を寄越すのに、一体どれだけの時間が掛かる?
そもそも現在の状況は?
「分かった、直ぐに部隊を編成する。お前は下がれ」
「ハッ!」
男性は俺達には目もくれず、素早く退室していった。
「話は後だ。私は行く」
同様に、キャヴェンディッシュ中将も。
リズが何か言おうとして、止めた。
「……ユウキ殿」
一拍置いて、俺に向けられる碧眼。
言いたい事は、リズの表情から大体分かった。
「キャヴェンディッシュ中将の所へ行こうか。戦力がここに在ると、そう伝えに」
覚悟を決めるしか無いか。
仕方無い……よな。
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