47647人が本棚に入れています
本棚に追加
包丁を研いで切れ味を回復させた俺は、快適に切れる食材に満足しながら料理を終えた。
献立は味噌汁と焼き魚、そしてご飯。
見事なまでの和食。
「何だか新婚みたいだねー」
「ブッ、コホッ!」
いきなり妙な事を言われたものだから、噎(む)せてしまった。
「ケホッ、ケホッ!」
ご飯の一口目を飲み込むタイミングだったのが最悪だ。
「ハァ……、ふぅ」
ああ、落ち着いた。
「……物凄く、失礼じゃない?」
わぁい。
左隣からドス黒オーラが溢れ出してるー。
「いや、急に予想外な事を言われた所為だ。俺だって悪気があった訳じゃ無い」
俺は努めて冷静に弁解。
黒いオーラが肥大化した。
「……ごめんなさい」
謝る以外に選択肢が無かった。
オーラの向こう側に、般若が見えた気がしたから。
「………まあ、良いけど」
オーラを収めてくれた桜はしかし、不機嫌そうな表情のまま。
「あー、その……本当にただ驚いただけで……」
「………」
無視ですか。
仕方無い。
時間を置こう。
「桜、宗助、おはよう」
俺達二人が朝食を食べ終えようとしている所で、昭久さんがやって来た。
「おはよう、お父さん」
「おはようございます」
桜の表情は、いつの間にか普段通りに戻っている。
相変わらず、俺との会話は無いが。
「この朝食は、二人で作ったのか?」
何か普段と違う所があったのか、昭久さんは席に着くなり訊いてきた。
「一応、材料を切るのは手伝わせて頂きました」
とりあえず自己申告。
「そうか」
「何か、駄目でしたか?」
不手際があったなら、謝らないとな。
「いや、大丈夫だ」
「そう、ですか」
「いただきます」
昭久さんは両手を合わせ、食べ始めた。
最初のコメントを投稿しよう!