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「昭久さん」
俺は地面に向けて繰り返し鍬を降り降ろしながら、同じ動作を繰り返す昭久さんに話し掛ける。
「朝食の時、何があったんですか? とても気になるんですが」
ザクッ、ザクッ、と土を切る音が聞こえ、両手に慣れない手応えを感じる。
「ん? ああ、大した事じゃ無いぞ」
ザクッ、ザクッ。
「普段より野菜の大きさが均一だったってだけだ」
ザクッ、ザクッ。
「……ああ、それで」
ザクッ、ザクッ。
「不機嫌そうにしてたからな、桜。下手な事は言わない方が良いと思ったんだよ」
ザクッ、ザクッ。
「で、何で不機嫌そうにしてたんだ?」
ガッ!
「………」
「何で黙る?」
「いえ、大した事じゃ無いです」
ザクッ、ザクッ。
「だったら話せるだろう」
ザクッ、ザクッ。
「……実は───」
「───という事がありまして」
ザクッ、ザクッ。
「ほう。ウチの桜じゃ不満だってのか?」
ガスッ、ガスッ、ガスッ!
「鍬の音が非常に怖いです、昭久さん」
ザクッ、ザクッ。
「良いから答えろ宗助」
ガスッ、ガスッ!
「……不満なんてありませんよ。客観的に見なくても、俺の方が釣り合わないくらいです」
ザクッ、ザクッ。
「そうか、なら良いが」
ザクッ、ザクッ。
「結構、親バカなんですね」
ザクッ、ザクッ。
「何か言ったか?」
ガスッ、ガスッ!
「いいえ。何も」
ザクッ、ザクッ。
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