課題

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 足の踏み場が少ししか無い我が自室を眺め、ヤレヤレと溜め息を吐く。  全く、こんなに散らかしたのは一体誰だ。  そんな意味不明な現実逃避をして、物と物の隙間を足場として部屋を出る。  二階にある自室から一階に降りてきた俺は、ダイニングキッチンに来た。  父親も母親も会社勤めで、帰ってくるのは深夜になる事もある。  今は午後七時で、まだまだ帰っては来ない。  だから俺は、自炊をする事に───は、ならない。  いや、普段はちゃんとしてるんだけどな?  けど今は、気力が無い。  首が痛くて疲れが取れて無くてスゲー腹減ってるから。  冷蔵庫の中をガサゴソと漁り、チルド室に入っていた冷凍ピラフを取り出す。  食器棚から底の深い皿を取り出し、冷凍ピラフを入れる。  ラップを掛け、電子レンジの中へ。  今更ながら、今日は土曜日だ。  理系の研究生にとって曜日は大した意味を持たないが、俺の場合、土日は大学に行かない事が多い。  そうしておかないと、曜日感覚が完全に狂うから。  で、何故そんな事を思うのか。  これも単純明快。  休みの日に家に籠りきり、全く遊んでいない現状が、全く以て大学生らしく無いと感じたから。  だからと言って、課題を放り出す訳にもいかないが。 「課題、さっさと片付けるか」  ピラフが入っていた皿とスプーンを洗い、課題へと思考をシフト。  課題の内容は、大方が行列演算。  直交行列、固有値、基底ベクトル。  この辺りの単語を並べられて意味が分からないなら、詳しい説明は無意味だろう。  そしてそこだけしか分からないなら、この課題の説明はやはり無意味だろう。 「フー………」  軽く目を閉じ、思考を止める。  ───良し。  少しだけクリアになった思考が、問題解決への糸口を見付けた。  ここからは早い。  ピアノの鍵盤を叩く様に、一定のリズムでコードを打ち込んでいく。  頭の中で思い描いたアルゴリズムを構築していく。
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