課題

4/5
47642人が本棚に入れています
本棚に追加
/1048ページ
「ま……、取り合えずこんなトコか」  部屋にある掛け時計は、午前二時を示していた。  課題は八割方が終わり、明日───いや、正確に言うと今日の午前中には、残りも全て終わらせられるだろう。  だからこれはひとまず切り上げ、もう寝よう。  ……って、ダメだな。  風呂に入って無いし、歯も磨いて無い。  朝イチで済ませても良いが、少し気持ち悪い。  サッパリしてから寝たいしな。  そう思い、俺は風呂場へと歩き出す。  体を洗って歯も磨いた俺は、ベッドに倒れ込む様にして寝転がった。  しかし、どうも頭が冴えて眠れそうに無い。 「深夜までプログラム組んだりなんか、するモンじゃ無いな……」  それでも夜は更けていく。  ピー、ピー、ピー、っと、目覚ましのアラームが鳴り響く。  少しだけ肌寒い、日の光が穏やかな朝だ。 「ん……っ、ハァ」  上半身を起こし、両腕を伸ばした。  まずは朝食だな。  ベッドから完全に起き上がり、部屋を出て、一階に降りる。  我が家の朝食は、大体がパンだと相場が決まっている。  今日も例によってパン───食パンだ。  それしか無かった。  俺は食パンをトースターにセットし、冷蔵庫からマーガリンとブルーベリージャムを取り出す。  狐色に焼けた食パンにマーガリンとジャムを塗り、それを頬張りながらテレビを見る。  会話は無い。  何故なら、この場には今は俺しか居ないから。  ウチは核家族で息子が一人。  三人家族だ。  両親は共働きで帰りが遅いと言ったが、行きも早い。  しかし今日は日曜日。  会社は休み。  なら何故、この場には俺しか居ないのか。  これまた単純明快。  疲れているからだ。  疲れて寝ているからだ。  こんな具合に、この家族はバラバラ。  「核」家族なんて名前のカテゴリに入れられながら、見事に分割されている。  更に、来年の春から俺は社員寮で独り暮らし。  国内とは言え、新幹線や飛行機で行く様な距離だから、もっとバラバラになる。  ま、家族仲が良い訳でも無し、付き合っている彼女が居る訳でも無し。  特に何の感慨も湧かない訳だけど。
/1048ページ

最初のコメントを投稿しよう!