捕虜

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「とにかく、歩こう。このまま立ち止まってたら、二人揃って凍死しそうだ」  そう言ってログは、いつの間にか止まってしまっていた足を再び動かす。 「……では、目的は? その程度なら、私に教えても問題は無い筈です」  その後を追いながら、私はそう主張する。  ログはチラリと私の方を振り返り、また前方に視線を戻した。 「……異世界への道は、ある程度決まった場所で開く必要があるんだ」  もしや何も言わないのでは、とにわかに思い始めた私の耳に届いた言葉。 「その決まった場所って言うのが、実は君達の国であるサザランドにある。次点で───ノエル」  サラリと、かなり重要な話を聞かされてしまったのではないだろうか。  いや……、嘘である可能性は、否めないのだけど。 「ただ、ノエルはかなり妥協した形になるんだよ。だからこれは、保険みたいなモノ。残念な事に、かなりの高確率で使う羽目になるけど」  私の視界に収まるログの横顔は、苦笑を浮かべていた。 「そう考えているのなら、サザランドを巻き込むのは止めて頂けませんか。妥協も出来るのでしょう?」  私は何と無く、ログは嘘を語っていない様な気がした。  そしてその直感に従い、言葉を突き刺す。 「俺としてはね。けど、アインとしては出来ない妥協なんだ」  けれどもログは、いとも容易く返してきて。 「より正確に言えば、俺にとってもサザランドは必要な要素なんだけどさ」  しかも、こちらには全く分からない話を付けてきた。 「貴方の、最終目標は───」 ───一体何なのですか。  そう続けようとした私の視界に、何かが入り込んだ。  反射的に剣を抜き、明確に私へと向かってきていたソレを叩き落とす。  刃から柄まで銀一色の、投擲ナイフだった。 「ほぉ、大したモンだ。何の危なげも無く防ぐとは」  そのナイフが向かってきた先から、低い男性の声が響いた。  ……何者だろうか。  私は周囲への警戒を強めつつ、そちらへと視線を向ける。
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