捕虜

28/61
47641人が本棚に入れています
本棚に追加
/1048ページ
 真っ白な外套に身を包み、両手の指にそれぞれ三本、銀のナイフを挟んだ大男。  右の頬には古傷らしき痕があり、それなりの修羅場は潜ってきていそうに見える。 「手荒い出迎えだね。それがここでの持て成し方なのかな?」  やれやれ、と腹立たしい程の余裕を見せ付けるログ。 「おうとも。余所者に対しての、最大限の持て成し方だ」  ……多少の話はあちら側に通しているのかと思いきや、そうでは無かったらしい。  人数は……十名か。  周りを囲まれた。 「ログ」 「もう入れた」  インスタンスに魔力を、と私が言う前に、ログは指先でインスタンスに触れていた。  流石に察しが良い。 「うっかり私に斬られない様、注意してくださいね」  ひとまずその気は無いが、馴れ合うつもりは無いので。 「それ、注意する人間が逆じゃないかな?」  ログが真顔でそう言いながら、私を見た。  私は剣を振るった。  ───キン、と。  冷たい金属音。  そして、一本のナイフが雪の上に落ちた。 「わざわざ、どーも。俺の髪の毛数本が、尊い犠牲となってしまったけど」  ログに向かって投擲されたナイフを一本、私が処理したと言うだけの話。 「成る程。貴方も殺気の有無は判別出来ますか」  自分の身体を剣が掠めたと言うのに。  微動だにせず、涼しい顔をしているから。  この場は涼しいを大幅に通り越して、極寒の地だけれど。 「結構小さい頃から、戦場は経験してるし。少なくともこの場で君に殺される事は無い、って分かるくらいにはさー」  帰る手段の問題もあるよね、と付け加えられた。
/1048ページ

最初のコメントを投稿しよう!