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真っ白な外套に身を包み、両手の指にそれぞれ三本、銀のナイフを挟んだ大男。
右の頬には古傷らしき痕があり、それなりの修羅場は潜ってきていそうに見える。
「手荒い出迎えだね。それがここでの持て成し方なのかな?」
やれやれ、と腹立たしい程の余裕を見せ付けるログ。
「おうとも。余所者に対しての、最大限の持て成し方だ」
……多少の話はあちら側に通しているのかと思いきや、そうでは無かったらしい。
人数は……十名か。
周りを囲まれた。
「ログ」
「もう入れた」
インスタンスに魔力を、と私が言う前に、ログは指先でインスタンスに触れていた。
流石に察しが良い。
「うっかり私に斬られない様、注意してくださいね」
ひとまずその気は無いが、馴れ合うつもりは無いので。
「それ、注意する人間が逆じゃないかな?」
ログが真顔でそう言いながら、私を見た。
私は剣を振るった。
───キン、と。
冷たい金属音。
そして、一本のナイフが雪の上に落ちた。
「わざわざ、どーも。俺の髪の毛数本が、尊い犠牲となってしまったけど」
ログに向かって投擲されたナイフを一本、私が処理したと言うだけの話。
「成る程。貴方も殺気の有無は判別出来ますか」
自分の身体を剣が掠めたと言うのに。
微動だにせず、涼しい顔をしているから。
この場は涼しいを大幅に通り越して、極寒の地だけれど。
「結構小さい頃から、戦場は経験してるし。少なくともこの場で君に殺される事は無い、って分かるくらいにはさー」
帰る手段の問題もあるよね、と付け加えられた。
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