47641人が本棚に入れています
本棚に追加
/1048ページ
「そうだな。話し合おう───」
平和的な手段へと事態が傾くのかと、そう思っていたがしかし。
「───かッ!」
三本のナイフが、迷い無くログの顔に向けて飛ぶ。
見事に交渉決裂。
いや、交渉と呼ぶのも憚(はばか)られる様な。
とは言え、きっとログは交渉の場を作るつもりなのだろうと思った。
何故なら彼は、涼しい顔で攻撃を防いだから。
突如として刀を実現させ、軽くナイフを弾いただけで止めたから。
怒った様子が微塵も無いから。
「悪いが、ここの責任者は俺なんでな。話し合いの手段は、少しばかり手荒になる!」
続けて三本、六本と、ナイフを投擲する男。
向かってきたナイフをログが弾いた頃、周囲に展開していた他の人間も各々動き始める。
ログはそれでも、余裕の表情を崩さないけれど。
「名前だけで相手を過大評価しなかった点は、一応誉められるか」
噂の一人歩きは良くある話で、それを鵜呑みにしなかったらしい事を言っているのだと思われる。
「ただ、結局それで測り間違えたなら、意味は無いな」
本当に、ユウキ殿でも言いそうで。
「サザランド最強の魔法使いの力を、見せてやる」
右手に白銀の刀、左手に青い炎。
ログは雪の上と言う条件を無視した移動速度で、敵へと肉薄する。
ノリノリですね、と茶化したくなるが似ている。
私でもそう感じたのだから、噂でしかユウキ殿を知らない連中には疑う要素など無いだろう。
さて。
私は私で、片付けはしよう。
それに、まだまだ付け焼き刃の域を脱していない二刀流を、早くモノにしなければ。
最初のコメントを投稿しよう!