捕虜

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「……何をしたのさ?」  極めて協力的になった男達の先導で、雪の中を歩いて進んでいると。  隣を歩くログが、ともすれば引き吊った様にも見える笑みを浮かべて訊いてきた。 「特別な事は、何も……。波風立てずに済む様に、言葉を選んで柔らかい表情を心掛けた結果……、ですね」  予想の遥か上空に、現実は到達してしまったけれど。 「いやー……、流石はキャヴェンディッシュ家のお嬢さんだ。『持ってる』よね」 「はい?」 「俺の計画に、見事に食い込んで来られた時点で分かってたけどさ」  お陰で計画の練り直しが大変だったよ、と続けられた。  恨み言の様に聞こえたのは、気の所為では無いだろう。 「……『食い込んで』?」 「計画の要である宗助に、深く関わってきただろ? 俺としては、到底無視出来ない要素になったって事さ」  ああ、成る程……?  少し納得出来ない点はあるものの、追及はひとまず控えておこう。  前方に見えたのは、天井がかなりの急勾配となっている尖った建物。  創作物の魔女が被る、三角帽子を彷彿とさせる形だ。  雪の所為で白く見える箇所が多いが、元は鮮やかな青を基本としているらしい。  所々にそれが伺える。  二階建てで、敷地面積はおおよそサザランド城の四分の一程度か。  それなりの広さはある。 「着きやした。汚ねぇ所で申し訳ありやせんが、どうぞ」  重そうな扉を力強く開き、そう言って私を招き入れようとする男性。  先程から、主(おも)だって私と会話している人だ。  丁寧な言葉を使おうとしているものの、少し口調が砕けてきた気がする。  メッキが剥がれる様に。  私としては、ある程度普通に接してくれるようになった方が良い。  だからそのまま、メッキは全て剥がれ落ちて欲しい。
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